息子にとって人生初めての春。
お花見にうってつけな近所の公園にレジャーシートを持って行き、桜の下でギャン泣きした息子を寝かしつけた。
満開の桜は、風が吹く度、吹雪のように花びらを散らした。
今日はお花見したね。綺麗だったね。
春には毎年、桜が咲くんだよ。
季節の訪れを愛で楽しむ文化がある日本人に生まれて嬉しいね。
寒い冬の後だから、よりいっそう美しく見えるんだよ。
今日見た桜は、パパとママは一昨年も去年も見たんだよ。
来年の桜は、新しいおうちの近くで見ようね。大きな桜があったら嬉しいね。
うちのベランダには、鉢植の桜があるでしょう。
あれは一昨年のホワイトデーに、パパが買ってきてくれたんだよ。
新しいおうちにも持って行くから、来年も咲くといいね。
4月になったらね、保育園に行くお友達や、幼稚園や小学校に通うお兄さんお姉さんがいるよ。
あなたもいつか桜の木の下で入園式の写真を撮ろうね。たくさんお友達ができるといいね。
夜、寝床に就いてもなんだかご機嫌そうに手足をバタバタさせている息子にそう話しかけていたら、日頃から割と傾聴派の息子はじーっとこちらを見て、聞いて、いつの間にか、寝た。
え、寝るんだ?! ひとりで抱っこもオッパイもなしに寝れるんだ??
すごいね。成長だね。春だね。
きっとこれから、春が来るたびにひとまわり大きくなった息子を見て、胸がいっぱいになるんだろうな。
空を覆う霞か雲かの満開の桜、風が吹いたその向こうの今日の景色を思い出すと、すくっと立った息子の姿がぼんやり見える気がした。
